大判例

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広島高等裁判所 事件番号不詳〔1〕 判決

主文

原判決を取消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は主文記載の如き判決を求め、被控訴代理人は控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする、との判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、原判決事実摘示と同一であるからこれをここに引用する。

(立証省略)

理由

係争家屋が元訴外山村逸雄の所有であつたが、昭和二十三年九月二十三日被控訴人が不動産競売事件でこれを競落してその所有権を取得したこと、控訴人が現にこれに居住して占有していることは当事者間に争がない。証人山村逸雄の原審並に当審における各供述、原審における控訴本人の尋問の結果、当審証人山村逸雄の供述によつて成立を認めうる乙第一号証を綜合すると、控訴人は訴外山村逸雄から昭和十三年一月頃以来係争家屋を賃料月十二円(終戦後は月三十円)の割合、毎月末払賃貸期間を定めずして賃借していた事実を認めることができる。被控訴人は昭和二十二年七月四日控訴人は係争家屋を訴外山村逸雄から買取つたから右賃貸借は消滅したと主張し、控訴人が同日その売買契約をしたことは当事者間に争ないけれども、当審証人山村逸雄の供述と、乙第一号証とにより明かな右売買契約をした後も引つづき昭和二十三年六月まで毎月訴外山村逸雄が賃貸人として控訴人から所定の家賃を徴収していた事実と、証人山村逸雄の原審並に当審における供述と、原審証人藤井勝治の供述とを綜合して考えると、右売買契約においては代金を一万五千円と定め、即時内金一万円を支払い残金五千円は昭和二十二年八月以降毎月千円づゝ支払い、その代金を完済したときはじめて家屋の所有権を控訴人に移転し登記手続をする約束換言すれば代金を完済するまではその所有権は売主である山村逸雄に留保し買主である控訴人に移転しないという合意が売買当事者間にあつたものであつて、控訴人は右代金の内金一万四千円を支払つたのみで残金千円を支払わず従つて未だ係争家屋の所有権を取得することができなかつたので、前示の如く昭和二十三年六月まで賃借人として所定の賃料を右山村逸雄に支払つてきたのであるが、その翌月頃係争家屋が競売に付せられ同年九月被控訴人がこれを競落したので尓後の賃料も支払わずまた右残金代金の支払もせず今日に至つたものであると認定するのが相当である。果してそうだとすると昭和二十二年七月売買契約と同時に係争家屋の所有権が控訴人に移りその賃貸借関係が消滅したものであるとの被控訴人の主張は理由がなく、競落当時前示賃貸借関係は存続していたものであると認むべきである。この点に関する甲第一号証の記載内容と原審証人吉中重幸の供述部分は採用しない。被控訴人の他の立証によつても右認定を左右するに足らぬ。而して控訴人が訴外山村逸雄から本件家屋を賃借しその引渡を受け居住していること被控訴人がこれを競落し所有権を取得したことは以上説示の通りであるから、被控訴人は当然賃貸人山村逸雄の地位を承継し右賃貸借は控訴人と被控訴人との聞にその効力を存続するものであることは借家法第一条の規定に照し疑ない。それゆえ控訴人の係争家屋の占有は正権原に基くものであつて不法占有と解することはできぬ。不法占有を原因とする本訴請求はこの点において理由がないから他の争点の判断を省略しこれを棄却すべきものである。被控訴人の請求を認容した原判決は不当であるからこれを取消すべきものと認め、民事訴訟法第三百八十六条第九十五条第八十九条の規定に則り主文の通り判決をする。(昭和二五年六月二〇日広島高等裁判所第三部)

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